第125回・記者クラブ楽屋裏座談会
A:全国紙記者 B:週刊誌記者 C:民放TV記者 D:フリー記者
E:風俗誌記者 W:証券会社OB
本日の座談会のテーマは、渦中のカルロス・ゴーン前会長による「金融商品虚偽記載事件」(有価証券報告書虚偽記載)とのこと。とあらば“前座”の私があれこれ口を挟むのは僭越至極。卑近な話題でトップ引きを務めるのが妥当な線。というわけで取り上げるのが、このところ新聞社会面に氾濫する飲酒運転、飲酒喧嘩、飲酒強姦、飲酒痴漢など「基地外水絡みの事件・事故」の記事。しかもその主役が、公僕たる警察官、教師、自衛隊員などの公務員、国から村会議員まで上下を問わぬ政治家諸氏、そして人気商売の芸能人、果ては実に怖ろしや車ばかりではなく空飛ぶパイロットまで。――身分、職業を問わない乱痴気ぶりは、まさに「一億総酒乱時代」。百薬の長どころか、今や完全に“凶器”扱い。酒に呑まれる御仁は昔からいたが、なぜ平成の世にかくも多くの“凶人”が出現するのか。過大なストレスのせいか、享楽主義のなれの果てなのか、膨張する個人主義の産物か?――こじつければ理由は数々考えられるが、邪推ついでにもうひとつ加えれば、国家挙げてのバッシングのせいで今や社会悪のひとつにされてしまったタバコの次の“標的”にするための布石では?と紫煙をくゆらせつつ思案する今日この頃でございます。
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B「カルロス・ゴーン容疑者関連のニュースが連日のトップ扱いです。確かに逮捕されたのが日産自動車の救世主であり、有価証券報告書に書かれなかった?報酬が50億円。――耳目を集めるのに十分な人物、金額だけに無理からぬこととはいえ、ほとんどが『ゴーン悪人説』『ゴーン守銭奴説』に加担するニュースばかりです」
D「『水に落ちた犬は叩け』『手のひら返し』『健忘症』が我が国の大マスコミの十八番ですが、ちょっと度が過ぎるような気がしないでもありません。しかし、ああした情報を彼らはどこから拾ってくるんでしょう?」
A「先行した朝日とNHKは、やはり昔からパイプのある東京地検。日経は日頃の付き合いの濃さから日産自動車本体。――その他は、ヤメ検ルートや日産OBを当たっているようだが、残念ながらいささか迫力不足。2馬身ぐらいの差で横並びといったところかな。そうそう、文春はゴーン氏の前妻に食い込んでいるらしいな」
C「現場記者の足腰が格段に弱っているからなあ、我が社なんか、からっきし。恥ずかしながら霞が関のリークネタに昔の映像をくっつけて、もっともらしく報道するので精いっぱいだよ(苦笑)」
A「若手記者の弱体化は我が社も同じだよ。ヘタに喝を入れればパワハラ騒ぎになるし、業腹だが、結局は地検頼り。情けない限りだ」
E「こうした時こそ週刊誌の出番ですが、3連単の一角に食い込んでいるのが文春砲だけとは。他誌は何をしているのですかね?」
B「老人ホーム・セックス・薬・墓・葬式――老人問題がメインです(笑)」
D「異議なし!――ホント、情けない限りですよ」
A「貧すれば鈍する――他社のことは言えないが、ウチだって同じようなもんだ(笑)」
B「足腰の弱った記者なんかゴミ以下だ!――ウチのお偉方の口癖ですが、当の記者たちは笛吹けど踊らずの毎日(笑)。パソコンと会見場の往復だけで性根の入った記事が書けるはずもありませんよ」
E「ところで、この事件の帰趨はどうなるのでしょうか?」
A「ボートレースに例えれば、スタートから1マーク転回直後までは特捜部が先行したが、向こう正面から2マークにかけては、司法取引に対する批判や資金使途の曖昧さに対する疑問が相次いだこともあって、やや行き足が鈍っているような感じだな」
D「もし、裁判で無罪にでもなったら大変なことになるんじゃないですか」
B「東京地検特捜部解体論とか…」
A「しかし、最終的に勝ち負けを決めるのは裁判官だからな。今や、司法の独立なんか絵に描いた餅。原発問題と一緒で、裁判所も忖度音頭の輪の中で踊るメンバーの一員だから、無罪判決は、万に一つもないだろう(笑)」
D「この先、ゴーン氏は何回ぐらい逮捕されるんでしょうかね?」
C「本丸の業務上横領を立件するためだろうが、ネタを小刻みに出していることを考えると3回ぐらいじゃないかな」
B「とすると〆て60日。保釈もないだろうから、クリスマスも年末年始も小菅では、外国メディアは大騒ぎするでしょう」
A「だろうな。推定無罪の原則なんか、我が国では有名無実だし…」
C「今回の事件は司法問題というより、片や日産を守れ、片や日産を奪れの、いわば日仏間の『日産争奪戦』。政治問題に発展するのは間違いないだろう」
A「いずれにしろ、事件が長期化するのは必至。お陰で司法担当記者の年末、年始の休暇がなくなったことだけは確実だな(苦笑)」
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永田町では「ゴーン事件」のせいで土俵際まで追い詰められていた片山某、桜田某の両大臣が命拾い、ニンマリしている